Elekit TU-872LEの製作

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 アンプを(一から)作る気力もあまりないのですが、理屈ばかり言っていても仕方がないので、キットを作ってみる事にしました。いろいろ考えて、回路的に面白そうな、エレキットのTU-872LEを購入してみました。友人からは、「エレキットは、簡単に作れすぎて面白くないぞ」とも言われていたのですが、やはり実際に見て作ってみないと分からない部分も沢山あります。という訳で、TU-872LE組み立てにまつわる話題を書き留めていこうと思います。購入前にネットで調べたのですが、分からない部分が多かったので、その辺を中心に(エレキットさんには迷惑にならないだろう範囲で)書いて行きます。

 TU-872LEは、Electro Harmonicsブランドの2A3のシングルアンプで・・・、というふうな情報はネット上に沢山あるので省略しますが、ドライブは6SN7の2段増幅です。標準的なCR結合の回路で、たぶん6dB程度(?)のNFBをかけているように思われます。真空管は、2A3も6SN7もElectro Harmonicsブランドのロシア製です。(回路定数については、気になる部分もあるのですが、ここでは書きません。)

小物部品(1)キャパシター

 まずキットの箱が届いて、説明書の回路をチェックして、小物部品を見てみます。小物部品を違ったものに替えるかどうかを考えるためです。結果的には、(私にとって)替える必要のある(あるいは替えられる)ものは、ほとんどありませんでした。

部品は丁寧にビニール袋に整理されていますが、袋分けは基板ごとではないようです。

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手前右側の袋に入っている、青いキャパシターがOSコンです。右奥の袋に静電防止スポンジに挿してあるのが、高圧整流用のブリッジダイオード(新電元 S1NB80)です。

 最初に気になるのは、キャパシター(コンデンサー)類です。カップリング・キャパシターは、松下のポリプロピレン(Pシリーズ?)でした。しっかりした部品ですし、普通に買うと安くはありません。安価なポリエステル・キャパシターだったら、松下のに替えようと思っていたくらいなので、僕にはまったく不満はありません。(精度はGなので、2%級です。)

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電解コンデンサーですが、B電源の大型ケミコンには、ニチケミのKMMが使われており、かなり大容量です220μF 420V など)。

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他の高耐圧ケミコンは、いずれも松下のものです。

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TU-872LEの真空管のヒーターは、すべて直流点火なのですが、ヒーターの平滑用のケミコンも松下です。

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この写真では分かりませんが、6800μF 10Vです。これらのケミコンは、すべて105℃仕様です。真空管アンプは熱くなりがちなので、寿命の点からも、これは望ましいことです。6SN7のカソード・デカップリングには、サンヨーのOSコンが使われています。キャパシターに関しては、かなりしっかりした部品を選んでいる印象を持ちました。

小物部品(2)抵抗器

小物部品で一番注目されるのはキャパシターではないかと思いますが、抵抗器ももちろん大切です。「ある抵抗が音がいい」とか、「抵抗で音が変わる」とか言う事は、僕にはよく分からないのですが、アンプを作る上で信頼性に大きく関わる部品ですし、精度、温度特性は動作点を決定するものですから、なるべくしっかりしたものを使いたいものです。

 最初は、エレキットに付いてきた部品でいいかな、と思っていたのですが、いざ作ろうと思ってDMMで抵抗値のチェックを始めたところ、何となく不満(不安感)が出てきました。定格の小さい抵抗器(1/2W、1/4W)は、すべてカーボン皮膜抵抗です。それはいいのですが、かなり小型のJ級(誤差5%)のものです。測ってみると、誤差5%の内ですが、割とばらついていますし、余りにも小型で「大丈夫かな?」という感じがします。1/2W品と1/4W品は同じ大きさで、ちょっと前の1/8W品くらいの感じがします。最近、小型の抵抗器が増えているのですが、それは塗装の難燃性が良くなってきたせいで、(当然ですが)発熱自体は変わりません。温度特性が良くなっていなければ、発熱(エネルギー損失)に対する安定性は悪化している事になります。

 僕自身は、低電圧の半導体の回路を組む分には小型の部品は気にならないのですが(というより、チップ部品などの小型の部品が好き)、真空管の回路では高電圧ですし、なるべく余裕のある容量の部品を使いたい気がします。ましてや、TU-872LEは直熱管を使っているのですし、小型の抵抗器では不釣り合いな感じもします。

 そこで、カーボン皮膜抵抗器については、違う物に交換する事にしました。ふつう、こういう部品の交換では理研のカーボン抵抗、リケノームなどが人気があるようです。僕自身は、金属皮膜抵抗が標準、電源部などでは丈夫な酸化金属皮膜、という感覚なので、その線で選ぶ事にしました(リケノームは高価ですし)。結果的には、損失の少ない部分はニッコームの1/2Wのプレート型の精密級金属皮膜抵抗(残念ながら、バルク抵抗器ではありません)、プレート負荷抵抗や2A3のまわりの抵抗器は、1W、2Wの金属皮膜抵抗を用いる事にしました。抵抗器としてはやや高価になりましたが、一本あたり40円から70円(2Wの金属皮膜抵抗)ほどです。大きさを比べると、かなり差があります。

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上から、2W金属皮膜、1W金属皮膜、1/2W金属皮膜(すべて1%級)、3W酸化金属皮膜、2W酸化金属皮膜、1/2Wカーボン皮膜(すべて5%級、エレキットの標準品)です。次の写真は、1/2Wカーボン皮膜、1/2W金属皮膜、1/2Wプレート型金属皮膜の抵抗を比べた物です。

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 結果的に、抵抗器はかなり大きなものに替える事になりましたが、基本的に温度特性も金属皮膜の方がいいですし、温度安定性、信頼性(安心感)は、かなり向上する事が期待できます(気分だけでしょうが)。

 ちなみに、TU-872LEの負帰還回路のインピーダンスは極めて小さく、カソード側の抵抗には、なんと1.8Ωを用いています。ニッコームでは1.8Ωを入手できなかったので、負帰還回路の(βは変えず)インピーダンスを上げて10Ωの抵抗に替えました。それでも、かなり低インピーダンスの負帰還回路です。一方、電源部では1.2MΩのカーボン抵抗を用いていて、酸化金属皮膜か金属皮膜に替えたかったのですが、1.2MΩは入手出来なかったので、こちらは少しインピーダンスを下げて1MΩで代用する事にしました(それに従って、他の抵抗値も変えています)。

大容量の抵抗はセメントです。これは、そのままです。

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(これは、秋葉原ではあまり見かけない松下製でした。)

小物部品(3)ソケットなどの機構部品

 機構部品でまず気になるのは、真空管ソケットです。2A3用のUXソケットは金メッキ、ステアタイトで、シャーシ取り付け用のものです。スタッドで固定し、大きなランドを使って基板にハンダ付けします。

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6SN7用のUSソケットは、基板取り付け用の一般的なものです。(これも金メッキ、タイトです。)

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 スイッチ類は小型のものが多いのですが、電源スイッチは、さすがにやや大きなものを用いています。小型のトグルスイッチは、入力切り替え用です。ボリュームは、8mm(?)の小型のもので、いささか頼りなく見えますが、最近はこのくらいが普通なのかも知れません。アルプスのミニデテントに替えても良いとは思いますが、とりあえず大丈夫という事にします。

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出力端子は、かなり大型のジョンソンターミナルです。

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入力端子は、基板取り付け用のもので、この辺はちょっと悩ましい感じもします。

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ボリューム・ノブは、ボリューム本体とはアンバランスなくらい大型の金属ボリュームです。使い勝手に大きく関わる部分ですが、けっこう高価と思います。

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人によっては、ACインレットが気になるかも知れません。標準的なIECインレットです。

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他の機構部品としては、けっこう大きな足(インシュレーター)がついてきます。一見金属ふうに見えますが、実は軽いプラスティック製です。この辺も、考えどころかも知れません(真空管は振動に敏感なので)。

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小物部品(4)その他

 ヒーター整流用のブリッジダイオードは、やはり新電元の S4VB20という、4A 200Vの一般整流用ブリッジです。これらの整流用ダイオードは、できればファーストリカバリー・タイプに替えたい所ですが、ブリッジタイプでは無いようなのです。シングルタイプに替えるとなると、すこし面倒なので、これで良い事にします。

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 TU-872LEには、ラッシュカレント防止のための簡単なディレイ回路が付いていて、小型の5Vリレーが使われています。

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 配線用のビニール被覆線は、こんなのが入っています。たくさん色があって、配線の色分けがしやすく便利です。

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入力まわりの配線用には、フラット・ケーブル状の端子が付いたケーブルを用います。

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この辺は、キットならでは、という感じがします。

 最後に、エレキット特有の「基板ピン」です。プラスティックの袋にたくさん入ってきます。

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プリント基板

 真空管アンプで大物部品と言えばトランス類ですが、このキットでは、プリント基板も大物部品だろうと思います。こんな大型の両面基板が入っていて、いくつかに割って使います。

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上の写真は表面(取り付けると下になりますが)、下の写真は裏面(取り付ける時は、ソケットが付いて上になる)です。

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両面基板ではあるのですが、スルーホール基板ではないので、何カ所かで基板ピンを用いて上下面の導通をとっています。

 ちなみに、プリント基板の型番はTU-873LEとなっていて、TU-873LE(300Bのシングル)と共通の部品である事が分かります。

A基板

 プリント基板は、増幅部のA基板、電源部のD基板と、その他の補助的な(小さな)基板4枚ほどに分かれます。A基板を切り出すと、こんなふうになります。

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上の写真が表面(部品面)、下が裏面(パターン面。実際はソケットが付いてこちらが上になります)。

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これに部品を取り付けて完成すると、下のようになります。こちらは、ソケットの付いた裏面です。右下には、トグルスイッチの入力切り替えの補助基板が付いています。

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ソケットの取り付けは、かなり大量のハンダを流して行います。特に、UXソケットは、基板のランドに端子を押し付けた状態で、端子が隠れるくらいハンダを流す、という方法で接続するのですが、「野蛮な」感じがするくらいです。USソケットの方も、ハンダで機械的に固定するので、大量にハンダを盛ってしっかり固定します。予めハンダメッキをして、ハンダが流れやすいようにして行いました。

下の写真は、部品面です。抵抗器は、電源用の酸化金属皮膜抵抗以外は取り替えました。それ以外の部品は標準のままです。

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拡大画像がここにあります。反対側(入力側)から、部品の部分を拡大したのが次の写真です。

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薄型のフィルムコンデンサーのように見えるのが、ニッコームの抵抗器です。取り付け穴の幅が、部品よりやや大きい(7.5mmに対して約9mm)ので、少し足を開いた形で浮き気味ですが、問題になるほどではありません。一方、1W、2Wの金属皮膜抵抗は取り付け穴の幅より大きいので、フォーミングして取り付けてあります。発熱の上からも、少し浮かせた方が良いでしょう。松下のポリプロピレン・キャパシターは、わりと大振りです(400V, 0.1μF)。

 ここまで来ると、「ひと段落」という感じです。

D基板+α

電源部の主要部分が、D基板になっています。配線前の基板です。

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次の写真は裏面です。

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どちらも、ランドがとても大きく、配線の時にはハンダを大量に使います。

 配線を終えたのが、次の写真です。(拡大画像が、ここにあります。)

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左側が電源トランスからの入力部分、右側が出力です。左手前の小さな半導体が、B電源の整流用ダイオードブリッジです。手前の大きな電解コンデンサーがB電源の整流コンデンサーで、右奥にリップルフィルターがあります。左奥に見える緑色の部品は、スパークキラーで、手持ちのものを付けました(標準では付属しておらず、オプションとしてコンデンサーと抵抗によるスナバ回路を配線する場所が確保されています)。カーボン抵抗器は、すべて金属皮膜と酸化金属皮膜のものに替えてあります。(電源部には酸化金属皮膜が良いと思うのですが、高抵抗は、金属皮膜しか入手できませんでした。)

2A3のフィラメントと6SN7のヒーター整流用のブリッジ・ダイオードと、B電源のリップル・フィルター用のFETは、裏面に付いています。(この上から、放熱板を取り付けます。)

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ついでに、B基板とE基板も組み立ててました。B基板はボリュームとLEDを取り付けるもので、取り替える人の多いらしい小型ボリュームが見えます(アルプス製です)。

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反対側には、LEDが付いています。(さすがに、LED用の抵抗は標準のカーボン皮膜抵抗です。)

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E基板は、入力端子の取り付けに用います。

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ここまで来ると、あとは組み立てと、ブロック間の配線です。

組み立て

基板が出来てしまうと、あとは組み立てです。いったん組み立てを始めると、途中でしまうのは難しいので、一気に組み立ててしまいます(作業場があれば、そのようにする必要はありませんが)。

 シャーシというよりケースという感じの鉄製のメインシャーシに部品を取り付けていきます。

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最初に取り付ける大物部品、アウトプット・トランス(OPT)の梱包を解きます。サイズは概略90x75x75(WDH)、重さは約1.7Kgあります。タンゴのU-808よりやや小さいかな、という大きさですから、このクラスでは大型と言っていいと思います。未塗装ですが、金属のケースも付いています。オリエントコア(方向性電磁鋼帯)を用いている、という事です。

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メインシャーシにリアパネルを取り付け、入出力端子を取り付け予備的な配線をし、OPTを取り付けると、だんだんアンプらしくなってきます。

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次に、D基板(電源基板)にヒートシンク(放熱板)の取り付けです。ついでに、薄く(その辺に転がっていた)シリコングリスをダイオードとFETに塗ってから、取り付けました。

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次に出て来る大物部品はパワートランス(PT)です。Rコアを用いたもので、Rコアトランスの開発元である、北村機電のマークが付いています。サイズは概略 130x110x60 (WDH)、重さは約2.4Kgでした。

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ケーブルの引き出し部分を良く見ると、ボビンに「PHOENIX R160」 の文字が見えます。160W級のコアを用いていて、実際の製造はフェニックスで行われているようです。

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電源基板とPTの間の配線を行い、パワートランスの配線と、他のケーブルも取り付けておきます。このとき、ケーブルの長さを指定してくれてあるので、キットは気楽です。

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拡大写真
を見ると、配線の様子がよく分かります。ここで、電源基板をシャーシに取り付けます。シャーシとPTとは(中途半端に)つながった状態で、このまましばらく作業を続ける事になります。

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 リアパネルまわりの配線を行い、A基板をシャーシに取り付け、A基板への配線を済ませます。そのあと、電源基板の上にスタンドを介してPTを取り付けます。重たいPTをこのように2階建て構造の2階に取り付けるのは、少し危うい感じもしますが、特に問題はないようです。ボリューム基板、電源スイッチも取り付け、ほぼ完成です。

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 リアパネルまわりはかなり窮屈な感じで、ターミナルなどがPTのコアに触りそうに見える部分もあります。PTの取り付けも窮屈で、もう少しスペースがあってもいいかな、という感じもします。(ターミナルのハンダ付けが、「イモハンダ」気味ですが、半田ごての容量が足りないらしく、致し方ない感じです。いちおう、しっかり付いており、電気的な接続も問題ないので、OKという事にしました。本来ならば、容量の大きなコテを買ってきて、やり直すべきでしょう。)

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 これで真空管を挿して動作チェック、という事にしても良いのですが、一晩くらい頭を冷やして、回路のチェックをもう一度してから通電する事にします。むき出しでは物騒なので、カバーを付けて、今日の作業をおしまいとします。

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 これに真空管を挿して、フロントパネルを取り付ける訳ですが、何となく無骨、質実剛健な感じのケースです。

火入れ

 組み立ての翌日、もう一度電源トランスも外して回路のチェックをしました。見て間違いを探すだけでなく、テスターでいろいろな場所の抵抗値をチェックします。キャパシターがある部分は、必ずしも抵抗値を正確に量れるわけではないですが、だいたい回路から想定される振る舞いをすることを確かめます。特に、電源まわりのショートなどがないか、しっかり確かめます(安全に関わるので)。

 真空管アンプの通電(「火入れ」という事が多いですが)の手順は、最初はB電源(高圧電源)を外しておいてヒーター、フィラメントの通電を確かめる、とか、スライダックを用いて少しずつ電圧を上げる、とか、いろいろあります。今回はすべて配線済みですし整流管も無いので、いきなり電源を入れてしまう事にしました。(真空管だけ外して電源を入れ、電圧をチェックしてから、という考え方もありますが、キャパシターに過剰な電圧がかかってかえって危ない場合もあります。真空管は丈夫なので、今回はこのステップも省略して、いきなり真空管を挿して電源を入れました。)自分で設計した回路なら、違った手順になったろうと思います。

 とにかく、真空管を挿し、出力にダミーロード(8Ωのセメント抵抗)をつないで、スイッチを入れました。どこからも音もせず、部品が燃える匂い、様子も無く、ヒューズも切れないようなので一安心です。

 電圧をチェックして、直流的には問題ない事を確かめます。左右のチャンネルの電圧は良く揃っていて、ちょっと意外なくらいでした。2A3のバイアスは約45V、プレート電流は約60mAで、ぴったりです。プレート供給電圧は300V(+1~2V)で、プレート電圧は約255V、プレート損失は約15.3Wです。2A3の最大定格の15Wを少し超えていますが、2A3の最大定格は設計中心値(Design Center Value)なので、この位のオーバーは問題ないでしょう。特に、EHの2A3は定格が大きめなようなので、(設計者としても)大丈夫という事でしょう。6SN7も、左右の電圧は良く揃っていました(1%以内、という感じです)。しっかり管理されている印象を持ちます。2A3のフィラメント電圧は低め(2.3V前後)でしたが、動作点がぴったりな事を考えると、意図的にそうしているのかも知れません。ちょっと気になったのは、2A3のグリッドの電圧が100mV程度出ている事で、しかも左右が不揃い(2倍程度)です。グリッドリークが330kΩと高いので、グリッド電流のためと思われます(0.3μAオーダーで、問題にはならないでしょうが)。

 小さなスピーカーをつなぎ、入力にはiPodをつないで、音を出しました。とりあえず問題なく動作しているようです。「音がいい」とかいうようなレベルの環境ではないので、音が出たという事で、いい事にします。次は測定、という事になりますが、測定のセットアップには準備が必要なので、しばらくPCにつないで使ってみる事にします。デスクの端において、こんな感じで使っています。

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 明るい所では、ボリュームのまわりに付いているLEDの明かりしか分かりませんが、暗くすると6SN7のヒーターはけっこう明るく見えます。2A3のフィラメントはかなり暗く、覗き込まないと光っている様子は分かりません。

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 暗くてほとんど分かりませんが、よく見ると、左側の2A3の頭頂部分には、青い蛍光が見られます。右側の2A3にはほとんど見られません。一般に、真空度が高いと蛍光が見られる、と言われるので、左側の方が真空度が高いのでしょう。グリッド電流も、左側の方がずっと少ないのは、たぶんそのせいでしょう。製造年月日は、1年半ほど左側の方が昔です(04/10と06/04)。電流が揃っているのは、選別しているのかも知れません。6SN7の方は、06/07と06/08で近い時期の製造でした。

 セレクターも付いており、オーディオセットにつないで使えるような設計なので、ちょっと勿体ない感じもしますが、エージングも兼ねて、しばらくはパソコン用に働いてもらう事にします。

2007年9月22日-10月1日 記.
2010年11月23日 修正.
Copyrighted by the author.