HeadWizeのChu Moy氏設計のヘッドフォンアンプです。このアンプは、インターネット上のヘッドフォン・ファンの間では標準的なものとされているらしく、多くの人によって、様々なバリエーションが発表されています。構成としては、Texas Instruments (旧 Burr-Brown)の OPA132/134を用いた、OPアンプによる最も簡単な非反転増幅回路で、このICの特徴を生かして、006Pの電池一個で電源を供給しているところが特徴と思われます。
CMoy ヘッドフォンアンプ 回路図
今回は、私は初心者ということもあり、回路、定数はいっさい変えず、日本で入手しやすい部品を用いて作ってみることにしました。
ケース内部の様子。クリックして拡大画像が別ウィンドウで開きます。
中身はこんな感じです。余裕のあるケースを使ったので、配線はかなりゆったりしています。見てのとおり、極めてシンプルなアンプです。
中核部品であるOPアンプICのTI OPA134は、若松通商あたりでは売っているかもしれませんが、秋葉原で買うと割高のようなので、Digi-Keyから通信販売で入手しました(Digi-Keyでの値段は@270円ですが、手数料、送料が一回ごとに2000円と高いので、まとめていろいろ買わないと高くつきます)。ケースはタカチのSB-95-34Cというパネルのみアルミのプラスチックケースです。他の部品は、全て千石電商で入手した一般品で、オーディオ専用部品は用いていません。ワイヤーはAWG22の耐熱ワイヤー、抵抗は金属皮膜KOA, 1/4W, 1%級, @10円)、フィルムコンデンサーはマイラー(ポリエステル、東信工業<、@20円)、ユニバーサル基板はサンハヤトICB-86Gを用いました。全体として、かなり安上がりなアンプで、総部品代は3000円以下と思います。
ポータブルCDプレイヤーパナソニック SL-CT790)と普及品のヘッドフォンオーディオテクニカATH-AD7)と組み合わせて聞く限りは、ごく当たり前の音がする、という感じです。ノイズはほとんど聞こえず、この点では問題ありません。入力開放でボリュームを最大にすると、かすかにノイズが聞き取れます。これは誘導雑音か、熱雑音か分かりませんが、ボリュームのインピーダンスが10Kオームでも雑音が聞き取れる、ということから、低雑音にするためにはインピーダンスを下げることが重要だというのがよく分かります(低雑音OPアンプの使い方で、常に強調されることではありますが)。オフセット電圧は、左右それぞれ1.8mV, 5.0mVほどです。ゲインは11倍なので、入力オフセット電圧は0.5mV以下と言うことになります。OPA134のデータシートによれば、入力オフセット電圧は0.5mV(typ), 2.0mV(max)となっていますから、こんなところでしょう。交流的なデータは、測定器がないので何も測っていませんが、OPアンプの性能そのままなので、意味のある測定は出来そうにありません
実用上の最大の問題は、実はボリュームの左右の連動誤差です。普及品のAカーブの2連ボリューム(@200円)を用いて、ボリュームをかなり絞って使っているので、左右の連動誤差がはっきり分かるレベルとなり、いささか気になります。アルプスのミニデテント・ボリュームなどを用いるといいかと思うのですが、このケースではスペース的に苦しく、難しいところです。Bカーブのボリュームを用いて、2次側に抵抗をパラに入れてAカーブをシミュレイトする方がいいかもしれません。
もうひとつ、これは製作目的の問題ですが、ちょっと中途半端な大きさになった感じがします。ポータブルヘッドフォンアンプとするのであれば、もう一回り小さく作った方が良かったようです。一方、据え置きで使うのであれば、(1)ケースを金属製とし、誘導雑音に対して強くする、(2)ボリュームをミニデテントなどの精度の高いものにする、(3)ACアダプターでも良いから、コンセントから電力を供給する、とした方が使いやすそうです。
とはいえ、簡単に作れて、そこそこに実用的で音も良く、楽しいプロジェクトでした。
2003年4月23日記.