CMoyヘッドフォンアンプのコピーがうまくいったので、今度は、もう少し小型化したものを作ってみることにしました。
回路構成は、CMoyアンプとほとんど同じで、 標準的なOPアンプによる非反転増幅回路です。
今回は、バイポーラー入力のOPアンプを使ってみたかったので、入力バイアス電流が キャンセルするように負帰還回路の定数を選んでいます。ゲインは、少し小さくして 6倍です。入力部のボリュームは、Aカーブの連動誤差をさけるために、Bカーブの ものを用い、負荷側に小さなインピーダンスの抵抗を入れてAカーブをシミュレイト しています。ボリュームは10KΩ、パラレルに入れる抵抗は2KΩとかなり小さめ ですが、実用上は問題ないと思います。OPアンプの入力バイアス電流があるので、 入力側のインピーダンスはなるべく小さくしたかった、という事情もあります。 インピーダンスが低いので、カップリングコンデンサーは無極性電解を用いました。 これは小型化にも寄与しています。
OPアンプは、新日本無線の NJM4580を 使ってみました。このICは、汎用OPアンプとしてポピュラーなRC4558 (オリジナルはレイセオン。現在入手しやすいの はNJM4558)を オーディオ用に改良したものです。低雑音で、比較的出力電流も大きいので ヘッドフォンアンプにはよく使われているようです(しかも安価です)。 例えば、BehringerのHA4400, HA4600はNJM4580を 使っています。データシートによると、電源電圧4V(±2V)から動作可能となって おり、9Vの電池で十分使えます。等価回路を見てみると、とても素直な構成の OPアンプです。オーディオ用として定評のあるNE5532 (NJM5532(JRC))も使えると 思いますが、電源電圧が6V(±3V)からとなっており、あまり余裕がありません。 CMoyアンプのOPA134の2回路版であるOPA2134も そのまま差し替え可能です。ほかのOPアンプでも、電源電圧が足りれば、 差し替えられるはずです。
電源は、CMoyアンプとほぼ同じです。OPアンプのすぐ近くに、積層セラミックコンデンサーによるデカップリングを追加しました。
部品は、すべて秋葉原で調達しました。これが部品表です。 電線、ねじ等は省略しました。
部品名 | 型番 | 数量 | 単価 | 購入場所 | コメント |
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ケース | タカチHA1593-PG | 1 | 460 | エスエス無線 (ラジオデパート2F) |
実はハモンドの OEMでカナダ製 |
ユニバーサル基板 | 秋月 P-182 | 1 | 70 | 秋月電子通商 | 片面エポキシ 71×47mm |
小型ボリューム | アルプス 9mm 10K(B) 2連 | 1 | 350 | 門田無線電機 (ラジオデパート3F) |
超小型、軸径6mm |
LED | 不明 | 1 | 60 | 同上 | |
ツマミ | ライテル
外径13mm、 シャフト 6mm、 ツバなし |
1 | 340 | 鈴蘭堂 (ラジオデパート2F) |
内側からねじ止め. ねじは六角 |
C1, C2 | 無極性電解 22uF25V | 2 | 20 | 千石電商 | |
C3, C4 | 電解 220uF25V | 2 | 20 | 同上 | |
C5, C6 | TDK積層セラミック 0.1uF50V | 1 | 5 | 同上 | 10個で50円の 特価品 |
R1~11 | KOA金属皮膜1%1/4W | 11 | 10 | 同上 | |
OPAMP | JRC NJM4580 | 1 | 80 | 同上 | |
ICソケット | 丸棒ソケット8P | 1 | 40 | 同上 | |
ジャック | 3.5in ステレオ | 2 | 50 | 同上 | ボックス型 |
電池ホルダー | タカチBH9VPC |
1 |
120 |
同上 | スナップ付き |
電源スイッチ | 2P 小型トグルスイッチ NST-AT102 |
1 | 90 | 同上 |
ここで特別な部品としては、小型ボリュームがあります。これが入手できたので、 作る気になったというのが本当のところです。9mmのボリュームは、あまり店頭では 見かけません。ほぼ同サイズの松下の部品が、 Digi-Keyで入手できるようです(ピンの ピッチは異なります)。贅沢をしたのはボリュームのツマミで、ライテルの部品を 使ってみました。止め方が独特で、外見も悪くありません。パイロットランプ用の 発光ダイオードは、ツバ付きの小型のものを見つけて使っています (型番は写してくるのを忘れました)。ケースはタカチのブランド名で売って いるハモンドの小型のプラスチックケースで、 電池用のスペースとフタが付いています。他の部品はすべて汎用品で、だいたい 千石電商で購入しました。
以上の部品代総計は、1905円です。
小型のケースに収めるべく、ユニバーサル基板をカットして部品を配置しました。
部品を取り付け終わった基板の様子
部品の取り付けが終わったところです。ボリュームは基板に取り付けました。 ボリュームのシャフトは、取り付けねじにワイヤーを噛ませて接地してあります。 抵抗を立てて配線するのは好きではないのですが、スペースの関係で、一部そう なっています。ICソケットのすぐ脇の青い小さな部品は積層セラミックコンデンサー です。
完成した様子。クリックすると、新しいウィンドウに右側部分の拡大写真が開きます。
これがケースに収めたところです。ワイヤーはもっと 短くすべきでしょうが、特に問題はありません。配線には、AWG24の耐熱被覆線を 用いています。まだ余裕があるようにも見えますが、現在の私の配線技術では、 このくらいが小型化の限界です。スイッチやコネクターの取り付けは、少し無理して いるところがあり、ヤスリで削ったりしています。
基板の底面からみた配線の様子
上の写真は、完成した基板をしたから見たところです (何人かの人からリクエストがあったので追加しました)。
前作よりは、ふたまわりほど小さく 出来上がりました。大きさの比較です。
大きさの比較。手前のCDは、Slapp Happy "Live in Japan - May, 2000"
このくらい小さいと、ポータブル、と呼んでもいい感じです。重さは、電池込みで 136グラムです。ボリュームの取り付けねじが見えないので、けっこう納まりが よく見えます。音については、まだ聞き込んでいませんが、ノイズも聞こえず、 特に問題ありません。出力のオフセット電圧は、両チャンネルとも0.8mV前後と 優秀です。
とりあえずは、それなりに実用的で愛嬌のあるヘッドフォンアンプとなりました。
オーディオ・カード、Audiophile 24/96 を入手した ので、アナログ入出力を用いて測定をしてみました。測定法は、測定ソフトと して RightMark Audio Analyzer を 用い、Audiophile 24/96 のアナログ出力をヘッドフォンアンプの入力につなぎ、 出力を Audiophile 24/96 のアナログ入力に入れてループバックでの測定をします。 測定のキャリブレーションで音量を -1dB に合わせる必要があるのですが、 PC上のボリュームコントロールは最大にして、ヘッドフォンアンプのボリュームで レベルあわせをしました。したがって、だいたい利得0dB で動作させています。 カードの設定は、サンプリング周波数 44.1kHz、データ長 24ビット です。 測定結果の概要は以下の通りです。
Frequency response (from 40 Hz to 15 kHz), dB: | +0.02, -0.08 |
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Noise level, dB (A): | -95.0 |
Dynamic range, dB (A): | 94.4 |
THD, %: | 0.0009 |
IMD, %: | 0.015 |
Stereo crosstalk, dB: | -97.6 |
測定結果の詳細は、ここで 見られます。数字的にはまずまずに見えますが、スペクトルを見ると、ノイズの成分は 電灯線からの飛び込み(50Hzとその高調波)がほとんどです。他には、15KHzあたりに ノイズの山が見えますが、これはインバーターなどからの飛び込みかもしれません。 ホワイトノイズのフロアーは十分低く、-130 dB あたりにあります。ひずみは、(THD も IM も)飛び込みと思われるノイズに埋もれ て判然としません。周波数特性の高域での減衰は、ADコンバーターのものと思われ ます。クロストークは、絶対値としては問題にならない量ですが、高域できれいに 6dB/Oct で上昇しています。これは、明らかに容量性結合で、ケーブルの並行部分で 漏れていると思われます。100Hz 以下での小さなふくらみは、電源からの回り込み かもしれません。
何にせよ、アンプそれ自体の問題と思われる欠陥は全く測定からは見えません。 これ以上の性能を出すには、まず金属ケースに入れて飛び込みノイズを減らす、 配線に注意して高域のクロストークを減らす、ということでしょうか。
2003年5月1日, 記